絵画感想文 〜臨床心理士がアート作品と対話しながら鑑賞し、作品の意味について考え、感受性を磨く訓練をしてみました〜

知識はなく、解説はできません。思い浮かんだことを、自由に書いていこうと思います。作品との対話による美術鑑賞や、ハウゼンとヤノワインのVisual Thinking Strategy(VTS)をやってみた、という感じです。

2019-01-01から1年間の記事一覧

032.靉光 ≪眼のある風景≫ 1938年 MOMAT(東京国立近代美術館)

眼のある風景 眼がじっと観客を見ている。 眼がなければ、空かな? 洞窟かな? と 幻想的な風景を楽しめるが、 眼があることで、一気に緊張感が増す。 とても不気味に感じる。 雲に隠れていても、洞窟の奥に隠れていても、無駄だ。 見ているぞ。 警告を発し…

031.奈良美智 ≪Harmless Kitty≫ 1994年 MOMAT(東京国立近代美術館)

Harmless Kitty 着ぐるみを着た幼児がオマルの上に座って、 苛立たしげな目を観客に向けている。 トイレット・トレーニングの最中で、 「見るな」という気持ちで、観客に対してすごんでいる感じがする。 なぜ、この絵に多くの人が惹き付けられるのだろうか?…

030.アメデオ・モディリアーニ ≪ヌード 1917≫ 1917年 グッゲンハイム美術館、アメリカ 

ヌード 1917 裸の女性が横たわっている。 眼を閉じ、腕を頭の後ろに組んでいる。 リラックスしている状態のようだ。 見ていると、安らかな気持ちになる。 ベッドと布団以外の家具がない。 ごちゃごちゃしておらず、 その点からも、見ていて落ち着く。 やはり…

029.フランク・ステラ ≪理知と混沌の結婚Ⅱ≫ 1959年 MoMA(ニューヨーク近代美術館)

理知と混沌の結婚Ⅱ まったく分からない。 タイトルを見てみると、“理知と混沌の結婚Ⅱ”とある。 すると、黒地が混沌、線が理知に見えてくる。 私たちにも当てはまることに気がつく。 黒地が私たちの心の中にうごめく欲望、 線が欲望を抑える理性。 理性が欲望…

028.ジョアン・ミロ ≪絵画≫ 1953年 国立西洋美術館

絵画 タイトルを見ると、≪絵画≫とある。 そうすると、 上部中央の黒は画家の目、 右の赤は描きたい気持ち、 左の青は冷静な気持ちを表わしている気がしてくる。 目で見て描きたい気持ちが膨らんだ一方、 気持ちのまま作品にぶつけるのではなく冷静になれ と…

027.ジャスパー・ジョーンズ ≪旗≫ 1954ー55年 MoMA(ニューヨーク近代美術館)

旗 汚れたアメリカ国旗が描かれている。 今、日本で汚れた日本国旗を描いたら、 どうなるだろうか? 「不謹慎だ」「愛国心が足りない」 「芸術だから何を表現して良い、というわけじゃない」 と言う人が出てきそう。 こういう絵を描けるということは、 表現…

026.福田平八郎 ≪雨≫ 1953年 MOMAT(東京国立近代美術館)

雨 瓦に雨粒が少しついている。 雨が降り始めたところだろう。 ぽつぽつと音が感じられる絵だ。 瓦はきれいに見える。 それなりの家の瓦なのだろう。 洗濯物を慌てて部屋の中に取り込んでいるところ かもしれない。 雨が降り始める前に買い物に行っておけば…

025.ジェイコブ・ローレンス ≪移住連作≫ 1940-41年 MoMA(ニューヨーク近代美術館)

移住連作 後ろを向いた3人と女性が数字を掲げている。 数字を振っているように見えないことから、必死さはなさそうだ。 手から緊張感も伝わってこない。 リラックスしている感じだろうか。 高台から下にいる人に合図を送っている感じだ。 この高台の建物は…

024.サルヴァドール・ダリ ≪記憶の固執≫ 1931年 MoMA(ニューヨーク近代美術館)

記憶の固執 時計が歪んでいる。 時空間のひずみが起きているのか。 時間を大切にしていないことへの警告なのか。 描かれた風景は荒涼としており、 精気はほとんど感じられない。 朽ち果てた感じ。干からびている感じ。 アリだけは元気そう。 少量の水と食べ…

023.アンリ・ルソー ≪眠れるジプシー≫ 1897年 MoMA(ニューヨーク近代美術館)

眠れるジプシー 月夜の砂漠に1人の女性が眠っている。 どこに寝ても良い気ままさや、しがらみのない自由さを感じる。 一方で、淋しさも感じ取れる。 脇には楽器が置かれている。 行く先々で弾き語りをして生計を立てているのだろうか。 反対側には動物がい…

022.横山操 ≪塔≫ 1957年 MOMAT(東京国立近代美術館)

塔 日本人画家による作品は、大好きな作品から。 火事に遭い、木が炭になってしまった塔。ボロボロになっている。 それでも立ち続けている。 その根性、圧倒的な存在感に、ものすごく魅せられる。 パワーを感じる。 小さいことにクヨクヨするな。 立ち向かい…

021.エドゥアール・マネ ≪フォリー=ベルジェールのバー≫ 1881年~82年 コートールド美術館

フォリー=ベルジェールのバー 2019年9月10日(火)~12月15日(日)まで東京都美術館で 2020年1月3日(金)~3月15日(日)まで愛知県美術館で 2020年3月28日(土)~6月21日(日)まで神戸市立美術館で 開催される“コートールド美術館展”で 見ることができる作品を取り…

020.パブロ・ピカソ ≪アヴィニヨンの娘たち≫ 1907年 MoMA(ニューヨーク近代美術館)

アヴィニヨンの娘たち 中年に見える女性がいろんなポーズをとっている。 左側の茶色は壁、中央の女性の後ろの白はテント、右側の青は空で、 女性たちが屋外の白いテントの中にいる感じがする。 右上の女性は顔にペイントをほどこしていることから、 祭りの準…

019.グスタフ・クリムト ≪エミリー・フレーゲの肖像≫ 1902年 ウィーン・ミュージアム

エミリー・フレーゲの肖像 2019年4月24日(水)~8月5日(月)まで国立新美術館で 2019年8月27日(火)~12月8日(月)まで国立国際美術館(大阪)で 開催される“ウイーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道”展で 見ることができる作品を取り上げます。 くじゃ…

018.エドワード・ホッパー ≪線路脇の家≫ 1925年 MoMA(ニューヨーク近代美術館)

線路脇の家 雲1つない青空に、青い屋根の家がぽつんと1軒だけある。 寒々しい。不気味な感じもする。 地面が見えない。 地に足がついていない感じもする。 地面がどうなっているか分からず、 不気味な感じを増幅させる。 窓の日よけ、上がっている所がある…

017.ルネ・マグリット ≪偽りの鏡≫ 1929年 MoMA(ニューヨーク近代美術館)

偽りの鏡 目に雲が映っている様子が描かれている。 なんだ? よく分からない。 タイトルを見てみる。 “偽りの鏡”とある。 確かにそうだ。 鏡も目も対象物を映す点では同じが、 描かれているのは鏡ではなく目だ。 この絵を見ていると、 空を見ている時、 目に…

016.フェルナン・レジェ ≪三人の女性≫ 1921年 MoMA(ニューヨーク近代美術館)

三人の女性 褐色の肌の女性1人と、白人女性2人が描かれている。 白人の2人は、髪の分け方は逆だが、顔は似ており、 双子の姉妹に見える。 3人とも裸である。 ポップな感じの部屋にいる。 3人ともソファーの上で、くるまったり、寝そべったり、 飲み物を…

015.ジョルジュ・デ・キリコ ≪愛の歌≫ 1914年、MoMA(ニューヨーク近代美術館)

愛の歌 白い頭部の石こう、赤い手袋、緑のボール。 何だか分からない。 タイトルを見てみる。 “愛の歌”とある。 すると、赤い手袋は受け止めるものの象徴で、 女性を表現している気がしてくる。 緑のボールは動き回るものである精子や睾丸の象徴で、 男性を…

014.グスタフ・クリムト ≪ユディトⅠ≫ 1901年 ウィーン、ベルヴェデーレ宮オーストリア絵画館 

ユディトⅠ 2019年4月23日(火)~7月10日(水)まで 東京都美術館で開催されるクリムト展で 見ることができる作品を取り上げます。 白人の女性が金に囲まれて うっとりとした表情をしている。 一方で、右下の男性はうつむいている。 男性を従え、金に囲まれ、 お…

013.ポール・シニャック ≪サン=トロペの港≫ 1901-02年 国立西洋美術館

サン=トロペの港 朝焼けしている港に、漁師が漁から戻ってきている。 明るい色使いから、活気が感じられる。 庶民の暮らしの充実ぶりがうかがえる。 よく見ていくと、 奥の岸は暖色の黄色や赤が中心で明るい一方、 手前の岸は寒色の青が中心で暗い。 コント…

012.フィンセント・ファン・ゴッホ ≪ばら≫ 1889年 国立西洋美術館

ばら 野に咲くバラ。 花に惹かれて近づくと、 トゲが刺さるだろう。 たくましさを感じる。 周りの草花とのバランスが取れており、 目立ち過ぎて浮いていることはなく、 個性が無さ過ぎて埋もれていることもない。 忙しい日常生活を送っていると、 このバラの…

011.ヴィルヘルム・ハンマースホイ ≪ピアノを弾く妻イーダのいる室内≫ 1910年 国立西洋美術館

ピアノを弾く妻イーダのいる室内 扉の向こうで妻イーダと思われる女性が ピアノを弾いている。 テーブルの上には灰皿が置かれているが、 その近くにはイスがない。 イスを画面の手前に置き、 そこに座ってイーダを眺めていそう。 イーダについては、 肩が下…

010.ジョルジュ・ブラック ≪静物≫ 1910-11年 国立西洋美術館

静物 テーブルの上にペン立て、鉛筆削り、重し のような物が置いてあるように見える。 しかし、はっきりはしない。 どうやら、個々の物に関して、 あれは何か、これは何かを考えても仕方がなさそう。 色使いから、 使い古されて静かにたたずんでいる物が 多…

009.ウジェーヌ・ドラクロア ≪墓に運ばれるキリスト≫ 1859年 国立西洋美術館

墓に運ばれるキリスト なぜこの場面が切り取られたのだろうか? キリストの頭部を抱えている赤い服を着た男は 急いで地下の墓にキリストを運ぼうとしているよう。 男の表情は切迫しているように見える。 男は“地上はけがれている。一刻も早く地下に連れてい…

008.ギュスターヴ・クールベ ≪波≫ 1870年頃

波 荒々しい波が下部に描かれている。 上部には多くの雲が描かれており、 雲の下部は少し赤味がかっている。 朝焼けなのか、夕焼けなのか。 不気味な印象を抱かせる。 変化の予兆を感じさせる。 波からは立ちはだかる壁、 泡からは色々なものがごちゃ混ぜに…

007.ポール・ゴーギャン ≪海辺に立つブルターニュの少女たち≫ 1889年

海辺に立つブルターニュの少女たち 暖かそうな服装をしているが、 目を下に移すと足は裸足。 手のゴツゴツさや少女たちの厳しい目つきにも目が行く。 厳しい生活が推測される。 一方で、右下に描かれている雑草からは 少女たちがたくましく生きていることも…

006.クロード・モネ ≪雪のアルジャントゥイユ≫ 1875年

雪のアルジャントゥイユ 踏みしめた雪の跡から、多くの人が行きかったことがうかがえる。 厳しい自然の中、たくましく生きていることがうかがえる。 人が二人屋外に出ている。天候が回復したのだろうか。 手前の人は中年男性のようで、動いている感じがしな…

005.イワン・クラムスコイ ≪忘れえぬ女≫ 1883年

忘れえぬ女 渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで2019年1月27日まで開催されている 展覧会で見ることができる作品を取り上げます。 イワン・クラムスコイはロシアの画家だそうです。 美しい女性が中央に描かれています。 侮蔑したような目線に、≪忘れえぬ女≫と…

004.エドヴァルド・ムンク ≪叫び≫ 1910年

叫び ムンク展が東京都美術館で2019年1月20日まで開催されているので、 ≪叫び≫を取り上げることにします。 叫んでいる姿ではなく、 叫び声をきいて、耳をふさいでいる姿が中央に描かれている。 彼は何に対して恐怖を感じているのだろうか。 描かれていない彼…

003.マリー・ローランサン ≪イル=ド=フランス≫ 1940年

イル=ド=フランス きれいな女性4人がたわむれている。 いかにも楽しそう。 「そんな所に突っ立っていないで、こっちに来たら」と誘っていそう。 そんな楽しいことには絶対に裏がある。罠だと思ってしまう。 奥の橋が境界になっていて、 彼女らに「あっちに…