032.靉光 ≪眼のある風景≫ 1938年 MOMAT(東京国立近代美術館)
眼がじっと観客を見ている。
眼がなければ、空かな? 洞窟かな? と
幻想的な風景を楽しめるが、
眼があることで、一気に緊張感が増す。
とても不気味に感じる。
雲に隠れていても、洞窟の奥に隠れていても、無駄だ。
見ているぞ。
警告を発しているように思われる。
敢えて眼の周りを見ようとしても
何だか分からないし、
常に眼の存在が気になる。
我慢し切れずに眼を見ると
やはり見られている感じが気持ち良いものではなく
再び眼の周りを見るようになる。
少し冷静になり、
なぜ画家は幻想的な空間に眼を描いたのか、考えてみる。
都会の風景の上に眼を描いた方が、みんなを監視しているぞ
という雰囲気はより強調されたはず。
よく分からない所から見られている不明瞭さ、
不透明さを強調したかったのだろう。
今の時代の空気にも当てはまる作品に思われた。