絵画感想文 〜臨床心理士がアート作品と対話しながら鑑賞し、作品の意味について考え、感受性を磨く訓練をしてみました〜

知識はなく、解説はできません。思い浮かんだことを、自由に書いていこうと思います。作品との対話による美術鑑賞や、ハウゼンとヤノワインのVisual Thinking Strategy(VTS)をやってみた、という感じです。

032.靉光 ≪眼のある風景≫ 1938年 MOMAT(東京国立近代美術館)

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眼のある風景

眼がじっと観客を見ている。

 

眼がなければ、空かな? 洞窟かな? と

幻想的な風景を楽しめるが、

眼があることで、一気に緊張感が増す。

とても不気味に感じる。

 

雲に隠れていても、洞窟の奥に隠れていても、無駄だ。

見ているぞ。

警告を発しているように思われる。

 

敢えて眼の周りを見ようとしても

何だか分からないし、

常に眼の存在が気になる。

 

我慢し切れずに眼を見ると

やはり見られている感じが気持ち良いものではなく

再び眼の周りを見るようになる。

 

少し冷静になり、

なぜ画家は幻想的な空間に眼を描いたのか、考えてみる。

都会の風景の上に眼を描いた方が、みんなを監視しているぞ

という雰囲気はより強調されたはず。

 

よく分からない所から見られている不明瞭さ、

不透明さを強調したかったのだろう。

 

今の時代の空気にも当てはまる作品に思われた。