絵画感想文 〜臨床心理士がアート作品と対話しながら鑑賞し、作品の意味について考え、感受性を磨く訓練をしてみました〜

知識はなく、解説はできません。思い浮かんだことを、自由に書いていこうと思います。作品との対話による美術鑑賞や、ハウゼンとヤノワインのVisual Thinking Strategy(VTS)をやってみた、という感じです。

005.イワン・クラムスコイ ≪忘れえぬ女≫ 1883年

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忘れえぬ女

渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで2019年1月27日まで開催されている

展覧会で見ることができる作品を取り上げます。

 

イワン・クラムスコイはロシアの画家だそうです。

 

美しい女性が中央に描かれています。

侮蔑したような目線に、≪忘れえぬ女≫というタイトル。

 

彼女のことが好きで好きでたまらず、

しつこくして嫌われ、

それでも好きな気持ちは変わらない。

苦しい。

彼女は冷たい視線を送ってくる。

でも彼女への気持ちは変わらない。

そうだ、絵にしてみよう。

 

結局、彼女への恋は実らなかったが、うまく昇華することができた。

おかげでストーカーにならずに済んだ。

 

こんなストーリーが一気に思い浮かぶ絵だ。

 

少し冷静になって絵を眺めてみると、

服装から裕福な家の出かもしれない気がしてくる。

 

背景には近代化された建物が描かれ、

近代的な女性、親の言いなりではなく、

自分で考え、自分で自分の人生を切り開く女性のような気がしてくる。

 

そう考えてみると、彼女の侮蔑の対象は

女性が自立的・主体的に生きる上での、しがらみに対してかもしれない。

枠にとらわれずに生きる彼女から

「それでいいの?」と問われている気がしてくる。

 

彼女に眼力があり、彼女の眼は何を意味しているのか

あれこれ考えるのが楽しい作品だ。