絵画感想文 〜臨床心理士がアート作品と対話しながら鑑賞し、作品の意味について考え、感受性を磨く訓練をしてみました〜

知識はなく、解説はできません。思い浮かんだことを、自由に書いていこうと思います。作品との対話による美術鑑賞や、ハウゼンとヤノワインのVisual Thinking Strategy(VTS)をやってみた、という感じです。

024.サルヴァドール・ダリ ≪記憶の固執≫ 1931年 MoMA(ニューヨーク近代美術館)

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記憶の固執

 

時計が歪んでいる。

時空間のひずみが起きているのか。

時間を大切にしていないことへの警告なのか。

 

描かれた風景は荒涼としており、

精気はほとんど感じられない。

朽ち果てた感じ。干からびている感じ。

 

アリだけは元気そう。

少量の水と食べ物で生きられるアリが元気なことから、

強欲なものは生きられないことを暗示していそう。

 

あくせく働き、心の潤いもゆとりも足りていない

現代人の心性を描き出した作品に思える。

 

だからこそ、幻想的ではあるが、

どこか馴染みのある絵の印象を抱くのだろう。

 

山が水面に映っており、

水があることに救いを感じる。

 

草が生え、草原になり、森になる可能性が残されている感じがする。

 

手前に水が描かれていないことから、

日常では気づきにくいが、

たまには日常から離れ、心を潤す必要性を本作から感じた。