絵画感想文 〜臨床心理士がアート作品と対話しながら鑑賞し、作品の意味について考え、感受性を磨く訓練をしてみました〜

知識はなく、解説はできません。思い浮かんだことを、自由に書いていこうと思います。作品との対話による美術鑑賞や、ハウゼンとヤノワインのVisual Thinking Strategy(VTS)をやってみた、という感じです。

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

045.J.M.W.ターナー ≪国会議事堂の火事 1834年10月16日≫ 1835年 フィラデルフィア美術館、アメリカ

国会議事堂の火事 1834年10月16日 対岸の火事が幻想的に描かれている。 おどろおどろしい雰囲気は感じない。 燃えている物や炎といった火事に関するものが 直接的には描かれておらず、 距離をとってぼんやり描かれているからだろう。 本作品の観客は対岸から…

044.パウル・クレー ≪Part of G≫ 1927年 ベルリン美術館、ドイツ

Part of G 月に照らされた、ある街が描かれている。 星の王子様の挿絵のようだ。 非常に安定感を覚える。 こじんまりで、そこだけで完結している感じがする。 建物が色とりどりで、 明るいイメージを抱かせるからだろう。 建物がいろんな方向に建っており、 …

043.東山魁夷 ≪道≫ 1950年 MOMAT(東京国立近代美術館)

道 人が行き交い、地面が踏みしめられ、整備され 道ができる。 そのようにしてできる道が、登り坂になっている。 本作からは、 ポジティブなメッセージをたくさん受け取れる。 どんどん道が整備され、 どんどん生活がしやすくなり、 どんどん社会が豊かにな…

042.ラウル・デュフィ ≪ドーヴィル競馬場、レース開始≫ 1929年 フォッグ美術館、ボストン、アメリカ

ドーヴィル競馬場、レース開始 タイトルには“レース開始”と書かれているが、 観客はまばらで、 熱心に声援を送っている人はいなそう。 このレースに人生をかけている といった緊張感は伝わってこない。 ピクニックに来たような感じで、 牧歌的な感じも受ける…

041.ウジェーヌ・ブーダン ≪ドーヴィル、波止場≫ 1891年 バレル・コレクション、スコットランド

ドーヴィル、波止場 2019年4月27日(土)~6月30日(日)まで東京・Bunkamura ザ・ミュージアムで 2019年8月7日(水)~10月20日(日)まで静岡市美術館で 2019年11月2日(土)~2020年1月26日(月)まで広島県立美術館で 開催される“印象派への旅 海運王の夢 バレル・コ…

040.松本峻介 ≪Y市の橋≫ 1943年 MOMAT(東京国立近代美術館)

Y市の橋 暗さを感じさせる絵だ。 川が橋の奥でどうなっているか分からない。 先の見通せなさを感じる。 工場の煙突に煙がなく、活気も感じない。 橋を渡って右から左に行っても、 反対に左から右に行っても、 先に明るさを感じない。 人も黒い。 行き詰まり…

039.オーギュスト・ルノワール ≪ピアノに寄る少女たち≫ 1892年 オルセー美術館、フランス

ピアノに寄る少女たち ピアノを弾いている少女と その少女の隣でピアノに片肘を置いている少女が 中心に描かれている。 和やかな空気が漂っていることがうかがえる。 その空気を描けることに感銘を受ける。 暖色中心の配色で、少女たちや部屋に暖かさを感じ…

038.ジョルジョ・モランディ ≪静物≫ 1916年 MoMA(ニューヨーク近代美術館)

静物 テーブルの上に細長い水差しやビンが描かれている。 どれも細長くて貧弱に見える。 そう見ると、テーブルの脚も貧弱で、 貧弱な土台の上に貧弱なものがのっている構図 であることが分かる。 いつ崩れてもおかしくない、危うさを感じる。 色に目を向けて…

037.佐伯祐三 ≪ガス灯と広告≫ 1927年 MOMAT(東京国立近代美術館)

ガス灯と広告 まさに思春期心性を表した絵であろう。 社会全体が自分を屈服させようとする敵に見え、 とがってしか生きることができない時期の心のあり様を 見事に表現している。 購買意欲を高める、本来なら甘く誘ってくる広告の文字が 自分を社会に溶け込…

036.ルーチョ・フォンタナ ≪空間概念≫ 1949年頃 フォンタナ財団、ミラノ

空間概念 赤いものをカッターで切ったら 下の黒地が見えた、ということだろうか。 タイトルは≪空間概念≫とある。 確かに、奥行きを感じ、3次元で本作を見ている。 しばらく眺めていると、 なぜ4本にしたのか気になってくる。 左から順に切っていき、 1番…

035.ルネ・マグリット ≪光の帝国Ⅱ≫ 1950年 MoMA(ニューヨーク近代美術館)

光の帝国Ⅱ 日中に陽の当たらない場所に集う人々が 世界の重要事項を秘密裏に決めていく。 そんな不気味さを一瞬で伝えることのできる作品だ。 青空に雲がいくつか浮かんでいる。 のどかな上部と不穏な下部のコントラストは見事だ。 一般人が下部に対してアプ…