絵画感想文 〜臨床心理士がアート作品と対話しながら鑑賞し、作品の意味について考え、感受性を磨く訓練をしてみました〜

知識はなく、解説はできません。思い浮かんだことを、自由に書いていこうと思います。作品との対話による美術鑑賞や、ハウゼンとヤノワインのVisual Thinking Strategy(VTS)をやってみた、という感じです。

015.ジョルジュ・デ・キリコ ≪愛の歌≫ 1914年、MoMA(ニューヨーク近代美術館)

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愛の歌

白い頭部の石こう、赤い手袋、緑のボール。

何だか分からない。

 

タイトルを見てみる。

“愛の歌”とある。

 

すると、赤い手袋は受け止めるものの象徴で、

女性を表現している気がしてくる。

緑のボールは動き回るものである精子や睾丸の象徴で、

男性を表現している気がしてくる。

 

コンクリート製の壁は手袋を貼り付けていることから、

女性を家に縛り付けていることを意味している気がしてくる。

 

白い石こうはギリシャ時代という言葉が思い浮かび、

古い人・古い考えというイメージが喚起され、

手袋はビニール製であることから

新しい女性(=女性も自立した生き方を目指そう、という近代的な考え方を持つ女性)の

イメージが喚起され、

工場の煙突からは近代化のイメージが喚起され、

青い空からはポジティブなイメージが喚起される。

 

これらを統合すると、

近代的な考えを持つ新しい女性(ビニール製の手袋)は

古い考え(白い石こう)から家(コンクリート製のの壁)に縛り付けられていたが、

今後の近代化の進展(煙突)により、

価値観の変化が訪れるかもしれない(青い空)、

という連想が思い浮かんだ。

 

タイトルによって、一気に連想が膨らんだ作品だった。