絵画感想文 〜臨床心理士がアート作品と対話しながら鑑賞し、作品の意味について考え、感受性を磨く訓練をしてみました〜

知識はなく、解説はできません。思い浮かんだことを、自由に書いていこうと思います。作品との対話による美術鑑賞や、ハウゼンとヤノワインのVisual Thinking Strategy(VTS)をやってみた、という感じです。

017.ルネ・マグリット ≪偽りの鏡≫ 1929年 MoMA(ニューヨーク近代美術館)

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偽りの鏡

 

目に雲が映っている様子が描かれている。

なんだ? よく分からない。

 

タイトルを見てみる。

“偽りの鏡”とある。

 

確かにそうだ。

鏡も目も対象物を映す点では同じが、

描かれているのは鏡ではなく目だ。

 

この絵を見ていると、

空を見ている時、

目には空が映っていることに気が付く。

 

ただし、本作のように

空が目に鮮やかに映っていることはないだろう。

本当はどのように映っているのか、確かめたくなる。

 

目と鏡の違いは何か?

目は本人が見たいものを見て、見たくないものは見ない。

鏡ではそうはいかない。置かれた場所に応じて、

そのまま映してしまう。

 

雲のある空を眺める時は、どんな時だろうか。

なんとなく、ぼんやりしたい時。

深刻に考えて行き詰まり、軽く考えようとしている時。

もやもやしている時。

いずれかだろうか。

 

本作のまぶたの感じから、ぼんやりはしておらず、

意志を感じる。

すると、地面に何かあり、それから目をそむけ、

空を見ている気がしてくる。

それこそ、鏡ではなく、“偽りの鏡”である目だから              

できることである。