031.奈良美智 ≪Harmless Kitty≫ 1994年 MOMAT(東京国立近代美術館)
着ぐるみを着た幼児がオマルの上に座って、
苛立たしげな目を観客に向けている。
トイレット・トレーニングの最中で、
「見るな」という気持ちで、観客に対してすごんでいる感じがする。
なぜ、この絵に多くの人が惹き付けられるのだろうか?
それは、現代日本を象徴している絵だからであろう。
どのあたりが現代日本を象徴しているのか?
日本は少子高齢化が進み、
日本社会全体として高成長は見込めない。
企業および企業で働く人々は、少ないパイの取り合いを常にしているので、
心に余裕がなくてイライラしている。
日本文化は空気を読む文化であり、
主張の文化ではないため、
常に競っているイライラを、上手に表現することができない。
結果、芸能人・役人・議員などが少しでも不適切な行いすると、
ストレス発散を兼ねて、みなで一斉に叩く。
こんなことが日常的に繰り返されている。
ウンチを上手に排泄する練習をしている幼児も、
イライラを上手に表現できない大人も、
上手に出す練習が必要な点では一緒だ。
それを本作品は見事に描いており、
だからこそ、多くの人を惹き付けるのであろう。
現代日本の空気を見事に表現した絵画だ。