絵画感想文 〜臨床心理士がアート作品と対話しながら鑑賞し、作品の意味について考え、感受性を磨く訓練をしてみました〜

知識はなく、解説はできません。思い浮かんだことを、自由に書いていこうと思います。作品との対話による美術鑑賞や、ハウゼンとヤノワインのVisual Thinking Strategy(VTS)をやってみた、という感じです。

031.奈良美智 ≪Harmless Kitty≫ 1994年 MOMAT(東京国立近代美術館)

f:id:hi02:20190324124205j:plain

Harmless Kitty

着ぐるみを着た幼児がオマルの上に座って、

苛立たしげな目を観客に向けている。

 

トイレット・トレーニングの最中で、

「見るな」という気持ちで、観客に対してすごんでいる感じがする。

 

なぜ、この絵に多くの人が惹き付けられるのだろうか?

それは、現代日本を象徴している絵だからであろう。

 

どのあたりが現代日本を象徴しているのか?

 

日本は少子高齢化が進み、

日本社会全体として高成長は見込めない。

企業および企業で働く人々は、少ないパイの取り合いを常にしているので、

心に余裕がなくてイライラしている。

 

日本文化は空気を読む文化であり、

主張の文化ではないため、

常に競っているイライラを、上手に表現することができない。

 

結果、芸能人・役人・議員などが少しでも不適切な行いすると、

ストレス発散を兼ねて、みなで一斉に叩く。

 

こんなことが日常的に繰り返されている。

 

ウンチを上手に排泄する練習をしている幼児も、

イライラを上手に表現できない大人も、

上手に出す練習が必要な点では一緒だ。

 

それを本作品は見事に描いており、

だからこそ、多くの人を惹き付けるのであろう。

 

現代日本の空気を見事に表現した絵画だ。