037.佐伯祐三 ≪ガス灯と広告≫ 1927年 MOMAT(東京国立近代美術館)
まさに思春期心性を表した絵であろう。
社会全体が自分を屈服させようとする敵に見え、
とがってしか生きることができない時期の心のあり様を
見事に表現している。
購買意欲を高める、本来なら甘く誘ってくる広告の文字が
自分を社会に溶け込ませようとするものにしか見えず、
トゲトゲしい、自分を傷つけてくるものとしか認識できない。
描かれている人は自分なのか他者なのか不明だが、
自分を描いたとしても、
自分はまだ社会にどっしり根をおろしていないので、
角が取れた丸みを帯びた存在として描くことはできない。
他者を描いたとしても、
広告と同様に、自分を丸めこもうとする存在としてだけ捉えてしまい、
全体をきちんと捉えることはできないので、
細い存在になってしまう。
ガス灯がともっていれば、
少しはほっこりするだろうが、
もちろんともってはいない。
温かみのあるものは存在しない。
空は描かれていないが、
心と同じで、厚い雲に覆われているだろう。
思春期心性にある多くの人を惹き付けてやまない作品だろう。
是非そういう人に見てもらいたい作品だ。