055.フランシス・ベーコン ≪人体の習作≫ 1949年 ビクトリア州立美術館、オーストラリア
タイトルには“人体の習作”とある。
しかし、男性らしき人は後ろを向いている。
後ろ姿の習作なら分かるが、
なぜこれが人体の習作なのだろうか。
後ろ姿こそが、その人の人となりを表す。
背中で語る、ということなのだろうか。
人は裸で、どこかに行こうとしている。
背景は黒なため、
暗部、他者に知られたくない所に
人は向かっている印象を受ける。
頭が下がっており、
気がせいているか、下に何かある感じがする。
体からは緊張は感じない。
シャワーを浴び終え、
不倫相手の待つベッドに行く所、
といった感じだろうか。
こう見ると、
秘め事をする時の人の動きが
適切に描かれていることに気がつく。
良くないと分かっていつつも
良くないことをしてしまうのは
人間の性(さが)か。
秘め事の前触れが見事に描かれた作品だ。