絵画感想文 〜臨床心理士がアート作品と対話しながら鑑賞し、作品の意味について考え、感受性を磨く訓練をしてみました〜

知識はなく、解説はできません。思い浮かんだことを、自由に書いていこうと思います。作品との対話による美術鑑賞や、ハウゼンとヤノワインのVisual Thinking Strategy(VTS)をやってみた、という感じです。

052.マックス・エルンスト ≪セレベスの象≫ 1921年 テート・コレクション、ロンドン

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セレベスの象

タイトルには“象”とあるが、

中央に描かれているのは、

何かの大きな装置のようである。

 

確かにその装置は象のようであり、

装置から出ている管は

象の鼻にも尻尾にも見える。

 

私には尻尾に見え、

象の後ろ姿が大きく描かれているように感じる。

 

象は荒野におり、

食べることができそうなものは、全くなさそうである。

このままでは象は、お腹が空いて

死んでしまうであろう。

 

あてもなく、さまよっている巨象。

これは正しく現代の大国に思えてならない。

 

工業化に成功し、象よりはるかに大きな装置を

作ることが可能になったが、

今後の見通しは全く明るくない。

 

描かれている人に顔がないのも、示唆的だ。

しっかり顔を出し、責任を持って

大国を適切な方向に導こうとする人の不在を暗示させる。

 

象にも人にも動きを感じをない。

ただ滅びるのを待っている感じがする。

 

諦めてしまったのか。

何も打開策を見いだせないのか。

 

象の尻尾は丸まっており、人の手は上がっている。

これらが、垂れ下がってしまったら、終わりだろう。

残された時間は、あとわずかしかない。